sungenのイラスト練習ブログ

デジ絵練習や小説関連のブログです。オリジナルWeb小説のイラストなど。二次絵は刀剣乱舞がメイン。




☆JACK+①②話お試し掲載【オリジナル小説】

JACK+本編の第1話、2話です。こちらのブログに書くとどういう感じになるのか見ようと思います。というか宣伝というか、むしろ記事がすっかすかなのでなんか足しておこうかなって。まあ暇だったら…超暇だったら続きも読んで下さいませ。姉ブログか小説家にになろうでどうそ。フォームはコピペです。

いつのまにか40文字万超えた長編なので最新話まで読もうと思ったらかなり時間削れます。暇つぶしには良いかも。

 

この書き方でやるとこういう風になりますよって感じの悲しい参考にでも…。

ちなみに縦書き用の文章ルールを無視した漫画文です。勢いで書いてる。

 

ジャンルはスポ根ダーク&サイケデリック&地下組織もの?

※主人公やサブキャラの外見描写は手抜きでほぼ無いので、分からなかったらこちらの登場人物紹介見て下さい。(メインキャラはまあ…多少イラストあります。というすさまじい微妙作品)

sungen2.hateblo.jp

速水 朔(17歳)が主人公。男。美形という設定。これだけわかればなんとかなる!

20170511115221

 この人です。

sungen2.hateblo.jp

 

 

 第1話

20160110162234

 【本文字数 6013文字】

 JACK+ ① 異国



速水は窓際で電話をかけていた。
このアパートは、なぜか電波の入りが悪い。


『おかえり、サク。フランスはどうだった?いつ帰ったんだい?』

「別に、普通だった。一昨日帰ったけどずっと寝てた。…今日は片付け」
『はは。楽しかったなら良かった。片付け、僕も手伝いに行こうか?』
「…別にいい。お前メルボルンから来る気か?」
『あはは。ああ、それで、撮影はどうだった?』
「まあなんとか。あいつも元気だった。お前によろしくって」
『彼の新曲はいつ出るんだい?PVはネット配信とかするのかな』
「さあ、なんか編集とか仕上げとか、時間掛かるらしい。でも今年中には出るって言ってた。でも二曲とか、聞いてない。アイツいつもそうだよな。俺が着く直前にインスピレーションで作ったって、じゃあこの曲に合わせて踊ってくれ!たまにはブレイク以外で、とか、無茶振りだろ!?まあ、踊ったけど」
『はは。彼らしいね。でもそれでヒットするなら、良いんじゃないかい?』

『それで、次はアメリカ?忙しいね』
「ああ。今度はニューヨーク。けどロスに寄ってから行くつもりだから、明後日には出発する。チケットももう取った。それまでに片付くかな…手紙はいいけど、ジャックのクマが…。やっぱ捨てようかな」
『うーん、じゃあクマ、僕も少し貰おうか?』
「いい。お前がクマとか、気色悪い。じゃあ、またメールする。電話は出られないから」

『はいはい。頑張っておいで。じゃあね』
「ん。隼人、またな」

通話を終えた速水は、携帯をPCラックの端に置いた。

外は残暑。室内は冷房が効いている。
速水朔、彼のアパートの部屋は様々な物で埋まっている。

いま、彼の部屋で一番の割合を占めているのは、友人の部屋から引き取ったテディベア。
ベッドの上、窓の枠、壁際、そしてソファーの上まで。薄いブラウンの、中~大の大きさで、三十くらいはあるだろう…。
と本人は思っているが、実際数えるともう少し多い。

部屋の中心には、木で出来たローテーブル。
その上には手紙が山ほど積まれていて、今にも落ちそうだ。

十畳ほどのワンルーム。元は何の変哲も無いアパートだった。

速水はこの部屋に、一月ぶりに帰って来た。
片付けもそこそこに直ぐ寝て。そして起き。
洗濯などをして、その後ずっと手紙を読んでいたのだが…、先程、そう言えばと思い親友の隼人に連絡をした。

速水は床に座った。
…ファンレター、ありがたいのかもしれないが、この量。
机の反対側にはまだ段ボールが三つ。全部見るのか?
速水はうんざりした。

そのほかにも。彼の周囲にはプレゼントらしき箱。これは二十も無い。
手紙以外はお断りとなっているので、いま散らばっている箱は、特に親しい友人達からのものだった。
この贈り物は後回しだ。
楽しみはとっておくタイプと言う訳では無く、単純に多い物から片づけるタイプなのだ。

彼は、プロのダンサーだった。
しかし一般的なイメージで言う、ヒップホップでは無く、ブレイクダンスをやっている。

彼は今から約一年と四ヶ月前、世界大会で優勝した。
その時は二人組、タッグで出場したのだが、その時の相方はもう居ない。相方は優勝した直後の凱旋ライブで死亡したのだ。

事故だった。

…そんな訳は無い。

いや、確かに事故だった。警察の調査を見ていたが、建物は老朽化していたが。
不審な点は無い、偶然と言う名の、不幸な事故?…本当に?
速水は信じていなかった。

タイミングが良すぎるのだ。
一体、この世界のどこに、世界大会で優勝して、凱旋ライブしたとたん、舞台の上であっさり死ぬダンサーが居る?

「ハァ…」
ハサミをテーブルに置いて。速水は溜息を付いた。

先程から、というかもうずっと、封筒を開けば。
『速水さん、ガンバって下さい!応援してます!』
『ジャックは永遠です!』
『…まるで、ジャックが生き返ったみたい、いえ、それ以上です!』
『感動しました!!ありがとう!!速水さん!いいえ、ジャック!!ずっとずっと!ファンでいます!一生かけて!!』

そんな言葉にうんざりしていた。
まあ、今まで放置していた自分が悪いのだが…。

それにまだ、友人宛ての手紙もあるのだ。
自分宛の物を見終わったら、そちらも見ないといけない…。

異国の地。日本。
ジャックはここで死んだ。
彼は伝説のダンサーだった。…死ぬ前から。

ジャックが死んだ翌年、速水は同大会に出場した。
結果は準優勝。…優勝できなかった。
振りは速水が考えた二人編成。しかし、一人で踊った。
ジャックはブレイクダンスの新たな境地を開いていたように思う。
速水はそれを額面通りに受け継いだだけだ。

…速水の踊りはすばらしいと絶賛された。

『俺はダンス続けます。ジャックの代わりにはなれないけど』
彼はインタビューでそれだけ言った。

それから四ヶ月。彼は今や、何処へ行っても『ジャック』と呼ばれる――。


彼はひたすら、開いて、読んで、しまって、輪ゴムでまとめて。
それを繰り返す。
『あなたのダンスが、大好きです!』
…それなりに文面に感謝して。

そしてまた次の手紙を手に取る。

「…?」
彼は眉を潜めた。
ファンレターらしさが全く無い、白い封筒…。

DMが紛れ込んだのか?速水はそう思った。
切手は無いが、これは別に珍しい事でも無い。
裏返してみる。

差出人は。

「ネットワーク…?」

とだけ記され。速水朔はその差出人を知らなかった。
封筒をまた裏返すと確かに自分宛だ。宛名シールに住所、氏名がパソコンで打ってある。
となるとただのDMだろう。料金別納郵便というわけでは無いから、直接ポストに入れたか?

…けど、おかしいな。何でファンレターの中に?ポストは見たけど、混ぜた覚えは無いし。
…一応開けて、大した物で無いなら捨てよう。

彼はそう思い、ハサミで封を開けた。

中から出て来たのは、一枚のカードだった。

トランプ。…ダイヤのジャック。

Suicaなどの磁気カードに似ているが、それよりも高級な感じだった。
裏は真っ黒。鉄か何かでできているのか?

「なんだこれ」
彼はそれを手に持って眺めた。
封筒をのぞくが、他には何も入っていない。
ネットワーク、とか明らかにうさんくさいし、誰かのイタズラか自作のアイテムだろう。
カミソリレターよりは洒落が効いている。
そう思って、袋に戻した。ファンレターではないので、輪ゴム行きとは別にした。

そこで、ふと無くすかも、と思い、彼は立ち上がってPCデスクにのせた。


その後また手紙の開封にいそしんでいると。チャイムが鳴った。

「はい」

インターフォンの画面を見ると、男が一人立っていた。
黒スーツに、えんじ色と白のストライプのネクタイ。くたびれたトレンチコート。

『あー、茨城県警の宇野宮大介って者だけど、一応警部。速水朔さんのご自宅で合ってますか?』
男は警察手帳を見せ、名乗り、そう言った。

「合ってます。…すみません。俺、今忙しいんですけど。ご用件は?」
速水は言った。明日はまた別の打ち合わせが入っているし、この手紙の山を今日中に片付けたい。
『ジャックさんの事故について、少しお話したいんですけどね』
「…お話?今さら?」
彼は首を傾げた。確かにこの男には見覚えがある。
事故の後、所轄の警察官を顎で使っていた男だ。

だが今更、電話ならともかく…いきなり訪ねてきて?
「何か分かったんですか?」
それでも速水は身を乗り出した。
『とにかく、中に入れて貰えるかな?何なら、外でも良い』

部屋には足の踏み場も無く、人を入れられる状態では無い。

「…今散らかってるので。出ます」
速水はそう言って、切り、キャップを手に取った。


「悪いね、態々」
「いえ。そこの店で良いですか?」
そして場所を近くの喫茶店に移し、簡単な事を聞かれた。

簡単な事、すなわち、あの日、あの場所に居たメンバーについて。
純粋な事故として調査は打ち切られたが、宇野宮はまだ調べ続けているという。
速水は当時を思い出し、名前を挙げた。

速水は招待した友人や、その家族、関係者、施工業者の名前も全て覚えていた。

宇野宮はそれに驚きながら、せかせかと手帳にメモした。
それなりに時間が掛かり、煙草を何本も吸っている。

「けど…やっぱりあれは事故だったんです。俺が信じたく無いだけで」
速水も当時は調査の粗を探したが、ジャックの死から時間が経ち、そう思う様になっていた。
実際、事故としか言いようが無い。

――あのライブの時――。

がつん、と舞台に天井の一部が落下した。
速水はそれを踊りながら目の端で捕らえた。

次の瞬間、天井ごと抜け、巨大な鉄の塊が落ちコンクリートが次々に落下し、ジャックを直撃し、速水も巻き込まれた。

まさに大事故。
場内に悲鳴が響き、パニックになった。

その後、内部の基礎の老朽化が酷かったとか、照明が重かったのではないかと言われ、ハウスの支配人と舞台装置の施工業者が、入院していた速水に土下座をした。

…何度も、世話になった人達だった。

支配人は自分の不備を責め、…見ていられなかった。

施工業者は、建物の耐久性を計算に入れていなかった、だがあの程度で落ちるわけが無い、あれは前回のライブの時と同じ物だった…たった一つの追加をのぞいては…!と涙ながらに釈明した。

速水は彼等の為にも、踊り続ける必要があった。

ジャックの死を悲しんでばかりは居られない。
立ち止まるわけにはいかない。泣いてしまうから。
踊らないと―!

「速水君」
「あっ、はい」
机の上のキャップに目を落とし、当時を思い出していた速水は顔を上げた。

とんとん、音がする。最後の煙草を取り出す音だ。
宇野宮の煙草は、これで一箱が空になった。

「俺も、ジャックのファンだったんだ。気持ちの整理がつかなった…」
宇野宮が、煙を吐き出し呟いた。

「そうですか…。ありがとうございます」
社交辞令だろうと思ったが、速水は礼を言った。
「君は若いのに、しっかりしてるな」
宇野宮は目を細めた。

「…あの、質問良いですか」
「なんだい、ああ、どうして今更来たかって言うと―、ハウスがもうじき」
「いえ、そうじゃ無くて。ハウスが取り壊されるのは知ってます」
「そうか、なら、最後に見に行くか」
「いや、そうじゃ無くて」「ん、ああ、」
さらに宇野宮が何かを言おうとしてお見合いになった。
速水は宇野宮とはタイミングが合わないな、と思った。溜息を付く。

「…宇野宮さん、あなた警視でしょう。何で今更調査に来たんですか。階級詐称とか良くしてるんですか?」
「―!!っ、ゴホっげほっ、ぎょっほ!」
速水の言葉に、宇野宮はむせ込んだ。
「な、ななんで知って、うわっ!」
宇野宮は手に咥えた煙草を落とし、拾おうとして灰皿をぶちまけた。
「何でって、別に。事故の後で聞いたんです、あの人は誰ですかって…」
速水は、宇野宮をじろりと見た。…速水は目つきがきつい男だった。
宇野宮はたじろぐ。

一年前、自身の怪我はたいしたことが無かった速水は、早々に退院し、調査に立ち会った。

確かに、現場の警官には宇野宮警部と呼ばれていた。

「けどそんな感じじゃ無かったし。一人を捕まえて、良く聞いたら、こっそり教えてくれたんです」
実際は、宇野宮に親しそうにしていた刑事をにらんでカマを掛けたのだ。

『おい。あの人、警部って言われてるけど、変に貫禄あるし、違う気がする。
キャリアって、見た事無いけど、…あんな感じかな?』
…そのうちに面白がって教えてくれた。

「あいつか。チッ」
宇野宮も、その刑事には心当たりがある様だ。
やけくそっぽく、最後の煙草を灰皿に押しつけた。

「分かった。嘘をついて悪かった。今日は頼みがあって来た。とりあえず出よう」
「え…」
宇野宮は伝票を取り、速水の腕を取り、席を離れた。

■ ■ ■


車に乗せられ、速水はライブハウスに来ていた。

移動に三十分ほどかかり、時刻は、もうすぐ七時。
何があるのか、異様なほどの飛ばしぶりだった。
車中ではあまり口を利かなかった。

「降りてくれ」
宇野宮が言った。

速水は車外に出て、ドアを閉め、落書きだらけのバリケードで囲われたハウスを見た。

ハウスは…崩れたステージを含め、当時のままになっているはずだ。
外観からはわからない。

そちらへ歩く。
バリケードのゲートに、幾つもの花束がおいてある。
涸れているものも多いが、いくつかは先日置かれたばかりのようだ。
…天国のジャックへ。手紙の内容はきっと速水の活躍に関するモノだ。

駐車場から走って来た宇野宮がバリケードのゲートを開けた。
鍵を用意していたらしい。腕時計を見て、ゲートの隙間に滑り込む。
「おい?」
腕を引かれ速水は戸惑った。危うくゲートに肩をぶつける所だった。
「いいから、早く!」
「ちょっ!何なんだ!?」
「急いでくれ!」

ライブハウスの扉は開いていた。

ホールに着いた宇野宮は肩で息をし、速水の腕を放した。
「おい!!奈美はどこだ!?…妹は!!」

「っ!?」
いきなり照明がつき、速水は目を細めた。
舞台で使う、スポットライト――。それがホールに入って来た速水と宇野宮を照らす。
「奈美!?」
その奈美は、ステージの手前に倒れていた。何故分かったのかというと、そちらにライトが当たったからだ。服を着たままロープで縛られ、胸にはナイフと血が。
これは!?人質――!!?
「っ!!」
宇野宮が駆け出す。
「おい!!!」
速水は宇野宮を止めようと手を伸ばして叫んだ。走り出そうとして、つんのめった。
体がぐらつくのだ。

「え…?」
気が付いたら床に膝をついて、腕をついていた。

速水は意識を失った。


■ ■ ■


速水と宇野宮が意識を失った後、十名ほどの人間がホールに入って来た。
皆スーツにガスマスク。
使われたのは全身麻酔などに使われるガス。それがフロアに充満していたのだ。
もちろん、奈美という女も事前にそれを嗅がされていた。
彼女に怪我は無い。胸に付いた血は血糊で、ナイフも単なる演出だ。

三人の男が倒れた速水に近づき、彼を拘束した。そして担ぎあげ、何処かへ去って行った。

残りの者達は撤収に掛かった。
機材をケースにしまい、その後で倒れたままだった奈美と宇野宮を運び出す。

…ホールには何も残らなかった。

〈おわり〉

 

 

 

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第2話

20160110162233

【本文字数 9801文字】

 

 

JACK+ ② レオン

 


そこはビジネスホテルのような部屋だった。


入って直ぐに簡易キッチン、冷蔵庫。向かいにシャワールーム。
ベッドは二つ。窓は無い。
そのベッドの入り口から遠い方に、誰かが横たわっていて、それを二人の男女が見下ろしている。

「…まだ起きないわね」
「量、間違えたんじゃ無いかな?っていうか東洋人だろ?遠かったんだよきっと。どうする?見てても仕方無いし、レオンはまだ来ないだろうし、どうせなら―」
金髪の青年が、ベリーショートの女の赤い髪に手を伸ばす。
彼女はおそらく成人。ベリーショートと言っても、耳の横だけ髪を伸ばしている。

この二人は恋人同士のようだ。

青年は水色のTシャツ。ブルー系の迷彩のチノパン。
女はジーンズに真っ赤なTシャツ。
金髪の青年は、巻き毛を少し伸ばし、白い紐で結んでいる。
青年の額に掛かった、ややうっとうしそうな髪を、女性が払う。
「…何いってるの。途中で目覚まされたら、何て言うのよ?それにここ、レオンの部屋」
女は金色の目で金髪の青年を睨んだ。

ドアが開き、背の高い、茶色い髪色の男が入って来た。

「ノア、ベス。お前等暇だな…多分、まだ起きないだろ」
この男は、金髪の青年よりは年上のようだ。掘りの深い顔立ちで、髪は短い。

茶色の髪だが強いて言えば金髪に近い。

服装はジーンズに白い襟付きシャツ。それを着崩して、ラフな印象だ。

「そりゃ俺はいつも暇だよ。…レオン。トレーナーは何て言ってた?」
ノアと言われた青年が返す。
「全くいつも通り。起きたら適当に説明して、俺が面倒見ろってさ」
レオンは頭をかきながら答えた。
「なら、やっぱりジャックになるのね?大丈夫なの?」
ベスという女性が聞いた。
「まあ、それなりの奴だとは思う。上じゃ有名なのかもな。しかし若いのに、馬鹿だよな」
レオンが向かいのベッドに腰掛ける。
「お前が言うなよ」
ノアは呆れた様子だ。

…彼等が話しているのは、英語だった。

「幾つくらいかしら。だってこの子凄い子供じゃない?十五?」
「さあ?あー、暇!早く起きないかな。カードで遊ぶ?」
「お前等、暇だな…」
「レオンもどう?ベス配って」「ポーカーで良い?」

しばらく三人は、空いているベッドの上でカードゲームをした。



――頭を右手で押さえた。ガンガンする。
「…ん…」
眉をしかめて、目を開ける――。



「おっ!起きた!」
ノアが目を輝かせる。
「…?」
ぱち、とベッドの上の少年の目が開かれる。

「おはよう、ジャック。いや、まだ分からないか」
レオンがほぼ真上から、少年を見下ろして言った。

「…?」
少年は「は?」と言う顔をした。誰だコイツ。

「君、起きられそう?具合は?」
ノアが身を乗り出して聞く。
少年は顔を少し横に向け、「え?」と言う表情をした。

…目を開けると、少年は余計幼く見えた。
彼は布団にくるまったまま、黒く大きな目を見ひらき、時折まぶしそうに目を細めながら、周りの三人を見ている。
どうひいき目に見ても、状況を理解しているようには見えない。
まだ薬が効いているのか、目をこするしぐさも緩慢だ。

「…?…ねえあなた。英語話せる?」
ベスがしゃがみ、首を傾げて言った。
もしかすると、言葉が通じていないのかもしれない。

「…??いや。え?…、イエス、宇野宮は?」
少年は日本語でそう言った。辺りを見回す。
「?ウノ?」
ベスは眉を潜めた。少年はyesと言ったが、他は日本語で分からない。

「どうする?」
ノアはレオンを見た。
「…、英語は分かるか?今から英語で話せるか?自力で身体を起こせるか?」
レオンは注意深く言って、ベスの隣にしゃがみ、少年に目線を合わせた。

少年は頭を左手で抑え、ベッドに右手を突きゆっくりと身体を起こす。
…理解は出来ているようだ。
ノアが手伝った。

「…アンタは誰だ?」
起き上がった少年が英語で喋った。三人に十分伝わる発音だった。

「なんだ話せるじゃないか。良かった。俺はレオン、これから同室になるから、よろしく。仲良くやろう。ああ、君の名前は?」
言葉が通じるなら面倒が無い。レオンは手を差し出した。

しかし少年は、差し出された手をじっと睨んだまま、動かない。

「…ここ、どこだ?」
そしてキツイ目つきで言った。

「ドコって、それは俺たちにも分からない。けど来る前に説明あっただろ?」
「…説明?」
少年が全く分からない、と言う顔をした。
三人は顔を見合わせた。
「…ねえ、あなたの名前を、とりあえず教えて」
ベスが代表で口を開く。
「ハヤミ、サク」
速水は混乱していたので、日本語の順番で姓名を名乗った。
「ハヤミね。私はエリザベス。ベスって呼んで。あなた、契約書、ちゃんと読んだ?」

「契約書?何言ってるか分からない…いきなり…」
速水は戸惑ったように髪をつかんだ。

必死に頭を落ち着かせ、記憶をたどる。

確か―。
宇野宮という警官が訪ねてきて、ライブハウスに行って―、奈美とか―。
いきなり、気が遠くなって。
そして、目を覚ましたらここにいた。見知らぬ場所、見知らぬ外人。

つまり。
――あの警官が、俺をハメた!?
「…くそ…っ!あいつ!!」
速水は舌打ちしシーツを握りしめた。ベッドを叩く。
うかつだった!

間違いない。
奈美と言う女性を人質に取られていた宇野宮は、ジャックをだしに速水をライブハウスへまんまと誘い出したのだ。
ホールで気が遠くなったのは、何か嗅がされたからだろう。殴られたりした訳ではないようだが…!
だが、一体だれが?
この三人は犯人とは無関係な気がする。速水と同じ、被害者という感じでも無い。

「おい!ここは?どこだ?」
ようやくまともに頭が動き始めた速水は、周囲をせわしげに見回す。
―ビジネスホテル?

「待て、ちょっとコレでも飲んで、落ち着け。君は、チャイニーズか?」
レオンが水を持って来た。
「違う。……日本人だ…」
速水は肩を落とした。
まだ混乱してはいるが、おおむね、自分の置かれた状況が理解出来てきたのだ。
三人とも、おそらくアメリカ人…となると…、まさかここは、日本では無い?
部屋の造りはビジネスホテルのようだが…、速水は様式の違いを感じ取っていた。

「ジャパニーズ?まためずらしいな。けど、まさか何も聞いて無いの?」
ノアが言った。
「ハァ…、おい、レオンってやつ」
「…」
速水にぶっきらぼうに言われ、レオンは少し眉を動かした。

「俺は、まだ混乱してるけど…、…多分、誘拐されてきた。説明とか一切無しだ。――犯罪だろこれ!日本に帰る方法はあるのか?」

誘拐。
その単語に、三人が驚き、顔を見合わせた。

「…推薦か…」
そして真ん中のレオンが天を仰いだ。

「って事は、君はやっぱり、ダンサーなんだな?」
レオンに言われ、速水は目を見開いた。
「…そうだけど、お前は俺を知ってるのか?」

「いや、俺たちはもうここに暫くいるから、上の事は知らない。君はメンバーの誰かに推薦されて、攫われたんだ」
レオンは同情を顔に表していた。可愛そうに…と言った感じだ。
「なっ!?…はぁ!!?………嘘だろ……」
速水はベッドの上で、頭を抱えた。

「ジャック」

ベスにそう言われて、速水はがばっと身を起こした。
「…!!」
至近距離で目が合い、ベスが驚く。
「このカード、あなたのだけど…」
そう言って見せられたのは、ダイヤのジャックだった。
「…!!それは――!!」
速水はそれをベスから奪った。

速水が封筒に戻し、PCデスクに置いたままだった硬質カード。

「…そうか、『ネットワーク』!!?あの手紙の!?」
意外な配線がつながり、速水は愕然とした。
「これが来たのは知ってるのか」
レオンが言った。

速水は悄然と項垂れた。
「ファンレターに混ざって、ダイレクトメールだと思って、気にもしなかった…家にあったはずだけど」
そして速水は、今の自分の持ち物を確認した。
ポケットにケータイと財布を持っていたはずだが…。
「…何も無いな」
「帽子があったよ。そこにある。靴も」
ノアがベッドの脇を指さした。確かにある。
「…」
この状況でそれは喜ぶべきなのか?
頭が別の意味でガンガンする…。しかし、ようやく手足にまともな感覚が戻ってきた。


「とりあえず、水をくれ…」

 


■ ■ ■


「俺は、確かにダンサーだけど。何で分かったんだ?」
水を飲み干し、速水は聞いた。
「それは、俺たちも踊りをやるからだ。ここはそういう人間しか来ない」
レオンが答えた。
「!?踊るのか…?―彼女も?」
「ええ」
ぎょろりと速水に見られ、ベスは少しムッとしたようだ。

「でも何で、その…推薦されたんだろうね?日本人攫うとか、結構リスク高いんじゃないか。ハヤミさん今何歳?」
ノアが速水のカードを弄びながら聞いて来た。
「十七だけど」
速水はそれだけ言った。
「何か、大きな大会とか出たりしたの?プロ?アマ?」
そうノアに聞かれたので、速水は経歴を適当に話した。

六歳くらいからブレイクダンスを始めて、一年半ほど前、タッグ…二人組で世界大会優勝。
その直後、相方は事故死。
「…で、この前はソロで出て準優勝だった」
ジャックの事はあえて省いたが、速水は何だか予感のような物を感じていた。

シーツを除け、ベッドから出てその端に座る。
「…聞いて良いか?」

「多分、そうなんだろうけど。ジャック―、ジョン・ホーキングってここの出身か?あのクマの好きな。俺、あいつと組んでたんだ」

速水の言葉に、皆がポカンとした。

「ジャックだって!?」
レオンが驚く。
「―!!?ちょっと待て!?じゃあ死んだって、ジャックのこと!!?」
「うそっ!?まさかそんな!信じられない!事故!!?」
ノアとベスが速水に詰め寄る。
「そうだ、彼が死んだだって!?」
レオンも気がついた。…乗っただけかもしれない。
とにかく三人が速水の近くで騒いだ。

「うるさい」
速水は黙らせた。三人は我に返った。

「…悪い。ハヤミ。ジャックと組んでたって…日本で会ったのか?」

レオンに聞かれるまま、速水は話す。

――バイト先でジャックと出会い、一年半ほどダンスを教わった事。
俺と組まないかと誘われ、ジャックにくっつく形で大会に出場した事…。
ジャックが死んで、代わりに踊り続けることにした事。
そのうちに、ジャックと呼ばれるようになった事――。

「…」
話を聞いた三人は、どんよりとしていた。

レオンが口を開いた。
「それなら仕方無い…、君は運が悪かったと思って、ここで頑張るしか無い」
ぽん、と肩を叩かれた。

速水は、レオンの態度に内心いらついた。
――運が悪かっただと?
レオンは、速水が攫われたのはジャックに関連した、いわば仕方の無いこと…と言いたいらしいが…。こんな、人攫いが許されて良いのか?

速水の親だって心配を…。
…彼は親とは、中学時代から絶縁状態だった。
隼人は速水が仕事でアメリカに行っていると思っているから、気がつかないかもしれない。
しかも電話するなと言ってしまった…。
しかし、速水が居なくなったら、仕事先に迷惑がかかるし違約金も発生する。
それは金があれば…ごまかせる?
…こんな手の込んだ誘拐をする組織だ。金はあるに違いない。
下手したら、速水が消えても、あっさり隠蔽されて終わり?

…やばい。

そこまで一気に考えて、速水は青ざめた。――全く笑えない。

「…ここのルールを説明してくれ」
速水はそれだけ言った。

「ああ…、今から教えてやるよ。ノア、カード貸せ」
「ん。どっち?」
「どっちもだ。ベスも貸せ」
「はいはい」

テーブルに置かれたのは、プレイングカード…いわゆるトランプと、速水の受け取った物と同じ硬質カードが三枚。
速水の物を合わせると四枚。硬質カードは全て絵柄が違う。

この三人が、これをそれぞれ持っていたと言う事は…。つまり。

「俺はダイヤのキングで、ベスはクイーン。ノアはエースだ。ええと…ハヤミだったか?『スート』って意味分かるか?」

「スート?…いや」
余り使わない単語だったので、速水は思い当たらなかった。

「『スート』って言うのは、トランプの絵柄のことで、ハート、ダイヤ、スペード、クラブのことなの」
「ああ。なるほど」
ベスの親切な説明に速水は頷いた。

レオンが続ける。
「俺たちはダイヤのグループ。ここでは同じ組のメンバーをファミリーって呼んでる。各スートに、絵札…ジャック、クイーン、キング、あとエースが居る。絵札の四人が最高ランクで、この四つに優劣は無い。もちろん各スートのメンバーは十三人ずつ。合計五十二人。一応皆ダンサーだ。それで、おおざっぱに言うと、各ファミリーで競い合うんだ」
「なるほど…」
と言う事は、ジャックは後三人…ダイヤ、ハート、スペードにもいると言うことになる。
確かにトランプを模しているならそうなるが、複数いるとは。

だがなぜ競うのか。

「どうして競うんだ?ダンスで…勝負するのか?…何で?」
速水は心底不思議そうに聞いた。ダンスバトル自体は確かに存在する。

特に、速水のやっているブレイクダンスはバトル色が強いダンスだ。
大会だってバトル形式が多いし、ストリートでも闘う。それが日常と言って良い。
だが、ここまで手の込んだ形式のバトルがあるとは聞いたことが無い。
非合法だし、速水が知らなかっただけかもしれないが。

――というか、競ってどうするんだ?賞金でも出るのか?
もちろん技を磨いたり、競ったり、勝ったりすることは嫌いではないが…。

踊りに優劣は無意味と言うのが、速水の基本的な思考だった。
彼にとってダンスは、観客や、誰かを喜ばせるためだけにある。

「目的とかあるのか?」
訳が分からない。速水はそう思って、それはレオンに伝わったようだ。

「…。まあ、誘拐されたなら仕方無いな」
レオンが溜息をついた。机から離れ、ベッドに座る。
ノアとベスは説明はレオンに任せ、テーブルに着いてババ抜きを始めた。

「ネットワークってのは、かなり国際社会に幅を利かせてる組織で、メンバーは全員、超金持ち。国際的な組織だから、グローバルネットワーク…そのまんますぎだけど『GAN』って呼ばれたりもする。組織の由来は…俺も親父がここ出身のダンサーだったから聞いただけだなんだが…。クランプダンスって知ってるか?」
「ああ」
速水は頷いた。
KRUMP(クランプ)とは、ロサンゼルス発祥のダンスバトル。
様々な抗争を平和的に解決しようと、ダンスで戦ったのが始まりらしいが…。

レオン曰く、ここのメインはそれと、速水がやっていたブレイクダンス
基本、ダッグまたはカルテット同士で戦う。たまにもっと大人数の場合も有り。
審判はネットワークから数人。
このあたりは普通のダンスバトルと同じだ。

「…アイツら、馬鹿なんだよ」
レオンは忌々しげに言った。

「その昔、二百年くらい前…『ヘイ!俺たち金が有り余ってるから、世界平和の為に、ダンスで何とかしようぜ!』…って考えた馬鹿がいたらしい。基本チャリティ。実際はただの掛けダンス。各国の大金持ちが、面子を掛けてより抜きのダンサーを集めて、競い合う。もちろん、内密に。…いわばアンダーグラウンドの見世物だな」
「…」
速水は頭痛がぶり返してきた。

「ちょっと待て。世界平和?ダンスで?―無理だろ!」
速水がそう言うと、レオンも頷いた。

「だよな。でも実際、莫大な寄付金でどっかの恵まれない子供とかは助かるし、抗争の調停とか、国連の発言権とか、色々影響あるらしい…となると、あながち馬鹿にもできないんじゃないか、…って俺は思ってるけど」
「レオンってさー、何か、今日も馬鹿だよな」
ノアが口を挟んだ。
「きっと明日も、あさってもそうでしょうね」
ベスが苦笑する。
「黙れ外野」
レオンは舌打ちした。

ノアが負けたらしいカードを置いて速水のベッドに座る。
「でも、ハヤミってすごいラッキーだ。誰が推薦したのか知らないけど、きっとハヤミのファンじゃない?」
ぴし、と指をさす。
「ファン?」
「そう、だって、普通日本人なら、ユーラシアのファミリー入れられるけど、あそこかなり物騒だから。特にジャパニーズに対しては風当たりキツそうだし」
「やっぱり、ジャックじゃないかしら。彼がいなくなってから、私達ずっと最下位だもの」
ベスが口を挟む。
「ジャックが?…」
速水は少し考えた。しかし、ジャックの性格からして―。
「いや、それは無いだろ。彼は説明も無しに、押しつけたりはしないはずだ」
レオンがそう言った。
「俺もそんな気がする。けど、誘拐じゃないなら、ノアとベスはどうしてここに来たんだ?」
先程、レオンは親がここの出身だったと言っていた。ノアとベス、他の皆もそうなのだろうか?

速水がそう言ったとたんに、二人の顔が曇った。

代わりにレオンが口を開いた。
「さっき言った通り、俺が一番オーソドックスな感じだ。大体家族とか、知り合いのダンサーの紹介で、連絡役に会って、契約を交わして入る。方法とか国によってまちまちで、アメリカは自由度高い。どっかじゃ、その為に孤児を買って―、ゴホ!」
ノアがレオンを蹴った。

「やっぱり馬鹿だね」
…つまり、ノアはそういうことなのだろう。

「私は…街で踊ってたら、家族を養ってくれるって…それを引き替えに入ったわ。十歳の時」
ベスが言った。

ベスは今二十歳。レオンは二十四歳。ノアは十六。

「ノア、十六には見えないな。老けてる訳じゃ無いのに」
速水は言った。
「、…よく言われるよ。主にジャックにはね」
ノアが苦笑した。
「ハヤミも十七には見えないな。意外に背は高いけど…コレがトウヨウノシンピ?」
「…さぁ。よく言われる」
レオンの言葉に、外人と良く付き合っていた速水は、ここは笑うとこだと分かったが、適当に答えておいた。

「それで、俺はここから、どうしたら出られる?時間が掛かるのか?ジャックは外に居たけど、…珍しい事なのか?」
速水はそれを危惧していた。
聞いた通りならベスは、十歳から十年もここにいる――。

「それだ。明日から、多分、ハヤミも『ワーク』に参加させられる」
レオンが真剣な表情で言った。
「ワーク?」
速水は首を傾げた。直訳だと『働く』…しかし動詞ではない。強調が掛かった名詞だ。

ノアが心配そうに速水を見ている。
「ダンスのレッスン、その他色々トレーニング。俺たちは今日の分を終わらせて、それで暇だった。他の連中は…、まだやってる」

ノアの言葉に、速水は驚いた。ベッド脇のデジタル時計を見ると、今は午後八時半。
時間で言えばそれほど遅くないが…。
いつからやっているのかにもよる。
「…、具体的には?」
「明日のメニューは、木曜日だから。これだな」
レオンが紙をめくって速水に渡す。
速水はそれを受け取った。
「―なっ」

AM4:00起床。
すぐに、十キロランニング。終わり次第朝食。
その後、ひたすら射撃。後、訓練B-15。
昼、休憩三十分。
午後~ダンスレッスン。

最後にまた走る。

「馬鹿だろ!」
速水は叫んでいた。なんで射撃!?
「ほんと、馬鹿だよな。奴ら、特殊兵でも育てるつもりなんだぜ」
レオンはニヤニヤしている。
「まあ、こんな変なのは木曜と、月曜だけだから。あ、日曜は安息日だから休みで暇。ダンスは得点式で、基準に達しないと終わらない」
ノアが髪を弄びながら言う。
「月曜は勉強日なの。私苦手」
ベスがぽつりと言った。

「ついて来れらそうか?」
レオンが言った。
「…分からない」
速水は、そのほかの曜日のメニューも受け取って確認し、正直に答えた。
若干青ざめる。

「…って言うか、無理かも。レオン、もし仮に、ダンスや、このメニューが終わらないとどうなる?ずれ込むだけか」
ランニングは慣れで皆、何とかなっているはずだ。なら、今日はダンスというのが長引いているのだろう。
「いや、最後の項目が…九時までに終わらなかったら、ペナルティがある」

「…どんな?」

「聞くか?」
レオンが言った。
「…」
速水は頷いた。どんな物にせよ、覚悟はしておきたい。
「トレーナーによって違う。今日は軽い方。ヤバイ奴の時は、皆死にもの狂いになる。基本はリンチ。けど、相手が悪いと…まあ、そのなあ」
レオンは言葉を濁した。
「ハッキリ言えばいいのに。ファックだって」
ノアが言った。

「…」
速水は黙った。頭を抱える。
…最悪だ…!

「絶対終わらせる」
彼はそう宣言した。
「まあ、がんばれよ。つか、お前がヤバイと俺もヤバイから」
「基本ペナルティは二人セットなんだ」
ノアが笑った。
笑い事じゃない…と速水は思った。もはやうなり声しか出ない。

「で、どうしたら出られる?」
「ワーク中、死んだら出られるよ。結構あるんだ」
あっけらかんと言われた。
ノアの言葉に速水はぎょっとした。
「…そんなにやばいのか?」
「まあ、色々な…、ワークは慣れとセンスで何とか。ノア、…あんまりハヤミをからかうな」
レオンが言う。脅すな、で無い辺り、実際にそうなのだろう。
「だって、ついて来られないと、ペナルティばっかだし、ペナルティで精神やられて、踊れなくなって、それで自殺とか良くあるじゃん。あー暇だなぁ」
暇というのはノアの口癖らしい。

「…まともに出る方法は?」
速水は聞いた。
外で何がしたいというわけでも無いが…さすがにまだ死にたく無い。
「そこでバトルだ。ただしこれが難しい。ってのは、俺たちが今、最下位ファミリーだからだ」
レオンが溜息をついて言った。
彼はここに、気が付けば六年いるな…と言っていた。
「つまり、一番のチームなら外に出られる?」
「ああ。五年に一度、スート対抗の大会があってな。そこで一位になれば。だが出られるのは、そのスートの上位、四人。ジャック、キング、クイーン、エースだけだ」

名のある四人の内、クイーンは必ず女性でなければならない。
その四人が勝って抜けた穴は、ファミリーの中の、ふさわしい人物が後を継ぐ。
と言っても決めるのは上らしい。レオン達はその際に選ばれた。
どうしても適当な人物がいなければ、そのまま空席になる。

スート『ダイヤ』では先代ジャックが抜けた後、永らくジャックがいなかった。

そして先代ジャックがここを出たのが二年九ヶ月前、十二月の事らしい。と言う事は…ここを出てすぐ後、速水に出会った計算になる。

「ジャック…、あのタコ野郎…!」
聞いた速水は思いっきり舌打ちした。今は悪態も英語だ。
「間違いなく、ハヤミはジャックが見込まれてたから、誰かに推薦されたんだろうな…。ジャックが説明する前に死んだ、とかじゃないことを神に祈ろう」
レオンが心底気の毒そうに、速水の頭を撫でた。
速水はそれをうっとうしげに振り払い、はぁ、と溜息を付いた。

レオンの言った通り、速水の命運はジャックに出会った時に尽きていた。
これはもう、しょうが無いと言われたらそうかも知れない…。

どうあっても、やるしかないようだ。

速水は立ち上がった。…まだ少しふらつく。
空のグラスを持って部屋を歩き、入り口付近の冷蔵庫を開け、水のボトルを取り出した。簡易キッチンにグラスを置いて水を注ぐ。

「じゃあ今日はもう寝る。薬抜きたいし。食い物は…水しかないのか?」
「板チョコならあるぜ。早く終わると貰えるんだ」
レオンが渡す。

「あら、潔い。はい、これ」「じゃあ、俺たちは行くね。これ俺の分だけど」
ベスとノアもポケットから板チョコを取り出し、簡易キッチンに置き、ノアはクスクス、ベスは微笑しながら立ち去った。

〈おわり〉

 

 

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■次回『第3話 自決(前編)』(姉ブログ版)

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なろう版 第3話

JACK+ グローバルネットワークへの反抗 (レジェンドチームⅠ) - 第3話 自決 (前編) -1/3-

 

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ブログ版は初めの方にもしかしたら細かい修正漏れとかあるかもしれないので、なろう版の方が良いかも。(と言っても大した違いは無いと思いますが)なろう版は読みやすく?分割してあります。お好きな方をどうぞ。このブログのサイドバーからも行けます。

近況報告記事に2話ずつ足すの案外悪くないですね。でもちゃんと挿絵描いて入れた方がいいかなぁ。気になったら続き読んでも良いし、こちらのブログへの掲載を待っても良いし。…改めて読むとなつかしい感じですね…。読んだ事無かった☆という方は是非どうぞ。私は自分で読み返そうかな恥ずかしさに悶えながら。

では。

 

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